プレーリードックにそっくりなリチャードソンジリスですが、ペットとして人気を博していたプレーリードックが感染症法により輸入禁止となって以来、ペットとしての流通が増えました。
今回は愛くるしい姿で、ペットとして人気を博しているリチャードソンジリスの習性や特徴をご紹介します。
名称
リチャードソンジリスは、スコットランドの博物学者「ジョン・リチャードソン」(1787/11/5 – 1865/6/5)によって発見されたため、その名にちなんで名付けられました。
「ジリス」は漢字で「地栗鼠」と書き、リス科のうち地面または地下で生活するものの総称になります。リスというと、木に登って木の上で生活をしているイメージですが、ジリスは木登りが苦手です。
ジリスには「リチャードソンジリス」の他に「ジュウサンセンジリス」「コロンビアジリス」などが挙げられます。
尻尾は他のジリスに比べて短く、フサフサしていません。
また警戒時にしっぽを震わすため、英語では「細かく揺れる尻尾」という意味の「フリッカーテール」とも呼ばれています。
寿命
野生のリチャードソンジリスのメスの死亡率はオスよりもはるかに低いです。
メスの場合、1歳までの生存率は40~50%であるのに対し、オスの場合はわずか10~20%です。翌年までの生存率はメスで50%、オスで15~30%です。
メスの平均寿命は2~4年ですが、オスは通常1~3年です。
野生で観察された最高齢個体は、メスが5歳とオスが3歳という結果が出ているみたいです。
また、飼育下のリチャードソンジリスの寿命については諸説ありますが、約5年~7年とされています。飼育下では、個体を襲う天敵がいないことや、栄養を十分にとれることから10年生きた個体もいるみたいです。
引用:Animal Diversity Web by University of Michigan
天敵
画像:https://www.photo-ac.com/main/search?q=%E9%BC%AC&srt=dlrank&qt=&p=1&pt=B
野生のリチャードソンジリスには、下記のような天敵がいます。
- ブテオ
- タカ
- ハヤブサ
- ワシ
- フクロウ
- ミミズク
- クロハシカササギ
- スカンク
- イエネコ
- イタチ科の動物
- イヌ科の動物
中でも、最大の天敵は「エナガイタチ」と「アナグマ」です。
エナガイタチは巣穴に侵入して乳離れしていない幼体を捕食し、一度の捕食で幼体の個体数を 50% 以上減少させるため、個体数の規模に大きな影響を与えます。
イタチは大人のリチャードソンジリスにとっても最大の天敵ですが、大人の個体はイタチと戦ったり追いかけたりすることがあるみたいです。
アナグマは地上でリチャードソンジリスを待ち伏せすることもありますが、普段は、巣穴を掘って襲うことで個体数を大幅に減らします。なのでリチャードソンジリスは冬眠開始後、地面が凍る前にアナグマに捕食されることが多いです。
鳴き声
リチャードソンジリスは天敵が襲ってきたことを鳴き声で知らせ、「鳴き声の頻度」「鳴き声と鳴き声の間の時間」と「繰り返しの頻度」などによって下記のことを仲間に知らせます。
- 対応の緊急性
- 捕食者の位置
- 捕食者の動き
- 脅威の確実性
- 天敵の種類(空中からなのか、地上のものなのか)
鳴き声を聞いた仲間は、鳴き声の種類によって天敵への対応方法を決めます。
(例)空中を飛ぶ天敵を知らせる鳴き声を聞くと巣穴に逃げる。地上の天敵を知らせる鳴き声が聞こえた時には警戒態勢をとる。など
私が飼育しているリチャードソンジリスの福は、頭をなでると目をつむって気持ち良さそうにするのですが、頭を撫でるのを辞めると、目を開けて「もう一度撫でて!」というように「ピーッ」と鳴きます。
もしかすると、要求を伝える時も鳴き声を発するのかもしれません。
嗅覚
嗅覚については、幼体の目が開く前の発達の初期段階で観察されます。
リチャードソンジリスの赤ちゃんは生まれた時に、嗅覚を使用して兄弟や親を識別します。
リチャードソンジリスの嗅覚についてはまだ研究が十分に進んでいませんが、糞にフェロモンを付けて、匂いによって縄張りを主張することから、嗅覚は重要な役割を果たしていることが研究されています。
食性
リスが木の実や昆虫を主食とする雑食であるのに対し、リチャードソンジリスは植物の葉を主食とする草食性に近い雑食性になります。
植物についている昆虫を好んで食べる個体もいるみたいですが、ほとんどの個体は好んで食べません。
リチャードソンジリスの食事について、注意したいのは「前歯」です。
リチャードソンジリスの前歯は生涯伸び続けるので、硬い餌やイネ科の植物など、前歯を削ることができるものを与えてあげてください。
野生のリチャードソンジリスが食べるものの例として、下記のようなものが挙げられます。
- タンポポなどの花
- ブーテロア・グラシリス
- アマランサス属
- レンゲ属
- イネ科の植物(小麦・大麦・オート麦など)
- 昆虫
形態
「リチャードソンジリス」は、よく見る普通のリスとは違い、体格がよく尻尾も短めです。
また、耳が小さく頭に張り付いている為、よく見かけるリスよりもプレーリードックに似ています。
リチャードソンジリスの体格的特徴を下の表にまとめてみました。
項目 | 特徴 |
---|---|
体重 | 400g前後 性別、場所、年齢、季節によって異なります。 |
体長 | 30cm前後 |
顔 | 食べ物を保管できる頬袋がある |
耳 | 小さく、穴を掘る際土が入りにくい |
手足 | 短めで爪がある・手で物を掴むことができる |
歯 | 前歯は常生歯で生涯伸び続ける・奥歯は伸びない |
野生のリチャードソンジリスは、冬眠前に体重が増え、冬眠から覚めると体重が落ちます。
分布(温度・湿度)
「ジリス」のうち、ほとんどの種類がカナダ~アメリカに棲息し、アフリカやユーラシアに少数が棲息しています。
その中でも「リチャードソンジリス」はカナダのアルバータ州南部、サスカチュワン州南部、マニトバ州南西部、アメリカのミネソタ州西部、ノースダコタ州、サウスダコタ州北東部、モンタナ州北部にかけて生息しています。
それぞれの州の平均最高・最低気温の目安と気候の表を作成してみました。
場所 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 気候 |
---|---|---|---|
(カナダ) アルバータ州南部 | 26.1℃ | -12.1℃ | 乾燥した大陸性気候 |
(カナダ) サスカチュワン州南部 | 25.8℃ | -20.1℃ | 半乾燥ステップ気候 |
(カナダ) マニトバ州南西部 (ロッキー山脈の麓) | 26.0℃ | -22.4℃ | 冷帯湿潤気候 半乾燥気候帯に似ている |
(アメリカ) ミネソタ州西部 | 28°C | -13.6°C | 大陸性気候 |
(アメリカ) ノースダコタ州 | 28.1℃ | -17.7℃ | 亜乾燥気候気象 |
(アメリカ) サウスダコタ州北東部 | 28.6℃ | -16.9℃ | 大陸性気候 |
(アメリカ) モンタナ州北部 | 27.4℃ | -9.8℃ | 半乾燥大陸性のステップ気候 |
表から分かるように、リチャードソンジリスは主に乾燥地帯からきているので、湿気を吸収してくれる床材を使用するなど、湿気に気を付けた飼育環境を心掛けましょう。
また、リチャードソンジリスは草原・野原・なだらかな丘陵・農地などに生息しており、地面を掘って部屋・通路・入口などがある大きな巣穴を作ります。
冬場になると、一年のうち6~8ヶ月その巣穴にこもって冬眠をします。
ただ、飼育下での冬眠はリスクが高いので、なるべく飼育温度を25度前後に保つようにしましょう。